今日もビショップ　MAGLIANO　ARLECCHINO MOHAIR

単なるアーティスティックなニットにあらず
 

1545年、イタリアの古都パドヴァにてある演劇が上演された。古代ローマの笑劇、アテッラーナが起源とされ、その後の芸術・演劇に多大な影響を与えた即興劇、コンメディア デッラルテである。特徴的なのはプロの役者たちが被る仮面、固定された役柄、そして筋書きはあれど台本のない独特な手法だ。役者の力量、観客の反応、世相などにより同じ筋書きでも臨機応変、縦横無尽に展開が二転三転するコミカルかつスリリングな舞台は大いに観客たちを惹きつけた。時代の流れと共に18世紀後半にはその歴史に幕は引くが、DNAは今の演劇やストリートパフォーマンスに脈々と受け継がれている。そして、世界的なメンズ展示会でも注目を集めた実力派、〈MAGLIANO〉のこのニットにも。モデル名に付けられたのは主要登場人物のひとりである道化師役。同役は様々な色の三角模様をあしらった衣装を身につけることが多く、アイテムに施された多彩な色柄はそれを想起させる。一見、無秩序な幾何学模様にも見えるが不思議と違和感はない。それはきっと手に取りたい衝動に駆られる優しいタッチが印象的なモヘアの起毛感のせいかもしれない。袖を通して感じるのは、かの演劇が上演された当時のような衝撃だ。