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CRAFT WITH PRIDE
徳島県鳴門市で誇り高いものづくりを真摯に続ける、NALUTO TRUNKSとは。

徳島県鳴門市で2008年にスタートした〈ナルトトランクス〉。サーフィンと西海岸カルチャーをこよなく愛する山口縫製の代表、山口輝陽志さん率いる職人集団が愛情を込めて丁寧に作っている唯一無二のブランドです。今回「ビショップ」にて取り扱いがスタートするにあたって、私たちは鳴門市に向かいました。こんな時期ではありますが、顔を合わせてしっかりとお話を伺うことに意味があるような気がしたのです。そこには、ものづくりの現場において長年に渡って磨かれてきた技術に対しての誇りと、高い理想があったのでした。


NALUTO TRUNKS代表 山口輝陽志さん

2008年に父が経営していた縫製会社「山口縫製」を引き継ぎ、オリジナルブランド〈ナルトトランクス〉をスタート。サーフトランクス、ボードショーツの既成概念を打ち破る、クラシックかつモダンでスタイリッシュなものづくりが評判を呼ぶ。2021SSシーズンより「ビショップ」でも展開がスタート。こだわりの別注商品もラインナップされる。

良い環境から良いものが生まれる。


ー山口さん、今日はよろしくお願いします! ところで本当に素敵な工場ですね。この建物はいつ完成したんですか?

ありがとうございます。気持ちいいですよね、ここ。できたのは6年前です。

ー建築のディレクションも手がけられたんですよね。

はい。今まで縫製工場って行ったことあります? なんかだいたい暗くて、正直気持ちのいい空間ではないことが多いじゃないですか。元々うちも、親父の代からあった工場はそんな感じだったんですけど、それが僕は嫌だったんです。

ーここはいい意味で、縫製工場っぽくないですよね。

そうでしょ? あと縫製工場をやってると、僕たちが一番下みたいなのがなんかあったんですよ。

ーというと?

うちはもう、どこかのメーカーさんのものを請け負ったりはしてないんですけど、普通の工場さんだったら、例えばどこかのセレクトショップさんのものを縫ってたりするじゃないですか。間に商社を挟んだりして、いわゆる工賃で仕事をするわけですよね。そうなると、さっき言ったみたいな感じにもなってくるんですよ。

ー下請け、というか。

そう。やってる人たちへのリスペクトがあまり感じられなかったんです。いや、これは僕の意見ですよ。けど縫ってる人ってみんな職人じゃないですか。職人としてきちんと見てもらえるような場所を作りたいっていうのが、まずありましたね。

環境がものを作っていくと思うんですよ。働く環境って絶対に大事なんです。だから今までの縫製工場はさておき、僕の好きな感じでやりたいということでこういう形になりました。

ーすごく開放感がありますよね。あとは清潔感も。

やっぱり僕はカリフォルニアが好きなんで、とにかく光と風と、あとは空気の流れにこだわりました。近所の人は縫製工場になるとは思ってなかったみたいですね。「カフェ作るんですか?」なんて聞かれたりして。

ーショップっぽいですよね。外観もすごくスタイリッシュですし。

僕らもそれなりの値段のものを作ってるので、やっぱりものづくりのベースとなる工場にこだわってなかったら、説得力がないなって思うんです。

ー確かにそうなんですが、こういう考えのもとに営まれている工場って、他に見たことがないです。ちなみに以前の工場も同じ場所にあったんですか?

はい。なので一回潰して、一からやり直しました。

ー天井の高さはポイントのひとつですよね。

細かい作業をするので、圧迫感があるとしんどいんですよね。上にヌケてなかったら、空気の流れも悪くなりますし。あとここは一年中あったかいです。冬でも朝にエアコンつけて、そのあとはエアコンいらずです。一年中Tシャツでいけますよ。

ーまさにカリフォルニアそのままですね。

ー建築を勉強されたんですか?

好きだったんで、なんとなくですね。カリフォルニアの壁はこういう素材で、建物の外観はこんなんで、とかを徐々に覚えていった感じです。あと、この建物内にあるものは基本全部オーダーしています。既製品はないです。

ー棚とかテーブルとか、使い勝手が良さそうです。

小さいことの積み重ねが大事なので。トランクスでも何でも、どこか一箇所がダサかったら、全部がダサくなるじゃないですか。なので「まぁいいか」はナシですね。

ーディテールに神が宿るとも言いますしね。

うちのスタッフにはそういう気持ちでやってくれとは言ってます。

ーこういう空間の中で作れるとなると、スタッフさんの気持ちとかモチベーションも変わってきますよね。

そう思います。昔だったら、お弁当を食べるのもミシンの上とかだったのが、今は二階にスタッフの休憩所兼ストックルームがあって、ご飯はみんなそこで食べてます。僕がここにいてしんどかったら、みんなも絶対しんどいはずなんですよ。僕は家よりこっちの方が好きですもん(笑)。会社の環境づくりってやっぱり大事だと思いますね。

ーサーフィンはいつから始められたんですか?

19歳ですかね。このへんだとクルマで10分くらいで波乗りできますよ。鳴門とかあの辺も全部スポットなので、乗れますね。

ーこのあたりはやっぱりサーファーが多いんでしょうか。

いますけど、まぁでも人口が少ないですからね。関西方面から来る人の方が多いんじゃないですか。

ーちなみにアメリカ西海岸にはいつ初めて行ったんですか?

高校卒業してからすぐですね。18歳とか。

ーサーフィンを始める前に行かれたんですね。

そうです。だって一番最初に板買ったのは、(カリフォルニア州の)サンタバーバラでしたもん。どうしても行きたかったんで、ホームステイしたんです。やっぱりあっちはいいですよね。あとうちのスタッフ、みんな〈パタゴニア〉を着てるでしょ? これ〈パタゴニア〉からサポートしてもらってるんです。僕個人だけじゃなくて、工場全体でサポート頂いています。

ーそういう理由があったんですね。

ベンチュラ(パタゴニアの本社がある場所)に行ったときに、たまたま日本のトップの方がいて、「面白いことやってますね。ぜひうちにサポートさせてください」って言ってもらったんです。

ー素晴らしいですね。

〈ナルトトランクス〉を立ち上げたときからなので、もう結構長いですね。元々ファンではありましたけど、やっぱり存在が近くなって改めて考えても、地域とか環境に対しての取り組みは尋常ではないですよね。ベンチュラに行って余計にそう思いました。なんでもやり続けるのって大事ですよね。

ーそもそも〈ナルトトランクス〉はどうやって始まったんですか?

僕はサーフィンするときにクラシックなサーフボードばっかり乗ってたんですけど、なんかピンとくるサーフトランクスがなかったんです。それで、もう少し改良できるんじゃないかなって思ってたんです。

ー機能的にも、もう少しいけるだろうと。

そうです。もっと履きやすく、あとは擦れないようにならないかなって。で、考えてみたらうち縫製工場だし、自分で作ってみるかっていうことで始めました。そのときはうちの工場も厳しい時期で、これが当たらなかったらやめようかなぐらいに思ってましたけど、なんとかここまでやってこれてますね。

ーそれが2008年ですよね。

はい。次は20年を目指してですかね。こんな時代なので、色々新しい試みをやっていかないとなとは思ってます。

ー今、スタッフさんは何人なんですか?

7人です。最初は僕と親父と、そこにいるベテランのおばちゃんの3人でスタートしたんです。初年度は全然オーダーつかなくて、終わったーって思いましたけどね(笑)。

ー何かブレイクしたきっかけってあるんですか?

いやー、なんでしょうね。。たまたま?(笑)

ー当時はSNSって感じでも、ないですよね。

違いますね。なんかそのあたりの時期にサーフカルチャーが盛り上がってきてたんですよね。カリフォルニアとかサーフィンとか。

ーそういった追い風があったんですね。

そもそも海パンを街履きにしたのは、うちが一番早かったと思います。今でこそウォークショーツなんてみんな言ってますけど、当時はそんな言葉もなかったし。商標取っておけばよかったですね、失敗しました(笑)。あと海パンにポケット付けたのも、うちが最初だったと思います。それにボタンダウンシャツ着て、オールデンを合わせるみたいな。

ー確かにそれは新しかったですね。それこそ〈パタゴニア〉のバギーズショーツを街で履くみたいなのはありましたけど、ちょっと趣が違いますよね。

全然違いますね。どっちかっていうと、僕らはアイビーとかトラッド路線でしたから。昔のサーファーがそんな感じだったんですよね。だから新しいわけではなく、誰もやってなかっただけなんです。そもそも流行り廃りであんまりやってないんです。うちのデザインってどちらかといえば、地味じゃないですか。

ークラシックな感じですよね。

そう。元からある感じというか。あんまり流行らなくていいので、続けていくことが大事ですよね。いかにずっと同じ物を作り続けることができるか、ということなんです。
「ビショップ」さんも似たようなところがあるんじゃないですか。いいものを長く扱っていくというか。

ーおっしゃる通りです。

あのボーダーのブランドもそうですよね。えーと、、

ー〈オーシバル〉ですね。

そう。なんでも、そういう風に長く付き合っていけるようなものじゃないといけないですよね。

ー確かに。

だからどこにでもあるようなものを作ってたらダメなんです。ブランド立ち上げて最初に18000円とか25000円っていう値段をつけたとき、「大丈夫?」っていろんな人から言われましたよ。

ーそれまでのサーフトランクスからしたら確かに高いですよね。

今はわりと普通かもしれませんけどね。あと丈の短さのことも言われました。やりすぎだろ!って(笑)。

ー値段は最初から変わってないんですか?

はい。職人さんの給料から上代を割り出してるんで。手間で値段を決めてます。ここで全部を一枚一枚手作りしてるので、量を作るにしても限界があるんですよね。

ーあと思ったのは、一人の職人さんが一つのアイテムを最初から最後まで作られてますよね。

そうです。よその工場だと、同じパーツをひたすら担当するっていうの方が多いですよね。けどうちは全部一人で責任を持って作りきるんです。

ー効率で考えるとパーツで分けた方がいいんでしょうけど、全部に携われるとなると、作る方の気持ちが違ってきますよね。

はい、全然違いますよ。想いみたいなものが乗ってくるので。「MADE IN JAPAN」って銘打ってるわけで、そこにはこだわっていかないとダメだと思ってます。

ー今回「ビショップ」ではインラインだけではなく、別注もお願いさせていただきました。

ありがたいですね。ジャケットに、ロングジョンっていうフルレングスのパンツ、Tシャツにショーツです。

ー簡単にお話し伺いたいです。

ジャケットは一から作りました。よくあるビーチジャケットなんですが、日本人が着やすいように、そして何にでも合わせやすいようにアレンジしています。ロングジョンは、シルエットを少しゆったりとさせています。

ーはい。最近の気分としてそういうお願いをさせていただきました。

うちのインラインは結構シュッとしてる感じなので、それと比べると結構違いますね。そしてレディースのショーツ。これで街に出るのは、けっこういいんじゃないかなって思ってます。どんな反響があるか楽しみですね。最後にTシャツはプリントが完全に「ビショップ」仕様です。背中に「LIFE IS DOUGHNUT」っていうメッセージが入ってます。

ーこれいたるところに入っていますよね。

うちの社訓なんです。「人と人とのつながりを大切にしよう」というメッセージを込めています。

ーすごく素敵な社訓ですね。文言としてもとてもキャッチーです。ところで山口さん、「ビショップ」のことは元々ご存知でしたか?

もちろん。神戸のお店に行ってましたよ。ヨーロッパっぽい雑貨とかも置いてて、その辺が気になってました。安心感のあるもの、きちんと作ってるものを置いているっていう印象ですね。

ーありがとうございます。

あとお客さんの年齢層が広いですよね。そういうのって大事だと思うんです。

〈左上〉ウォークショーツ ¥19,800
〈右上〉バンドウォークショーツ ¥20,900
〈左下〉レディースウォークショーツ ¥19,800
〈右下〉コーデュロイウォークショーツ ¥25,300

BUY

鳴門市から広がっていく、いくつもの夢の形。


〈ナルトトランクス〉の工場から歩いて1分のところに、「ナルトキッズ保育園」はあります。ファッションブランドを営む会社が、保育園を運営? いったいどういうことなんでしょうか。実はこの保育園の創設には、山口さんのお話しに何度も出てくる〈パタゴニア〉の存在が大きく関わっているのです。

ーここも、ものすごく気持ちのいい空間ですね。

工場と同じような作り方をしてるんで、やっぱりすごくあったかいんですよね。

ー子供達がすごく楽しそうにしているのが印象的でした。

そうでしょ? あんまり泣かないんですよ。子供ってお母さんが送ってきて、朝別れるときに泣いたりするじゃないですか。あれがないみたいです。むしろ帰りたがらないみたいですよ。あとは19人の定員に対して、スタッフが15人いるんです。

ーほとんど一対一ですね。

そう。そこがキモなんです。命を預かってるわけですし、そこはちゃんとしないとなと思っています。今は徳島県内の40社と提携していて、お子さんをお預かりしています。 だから鳴門市だけじゃないんですよね。もちろんスタッフのお子さんもいますが。

ーなんでもベンチュラにある〈パタゴニア〉の本社の保育施設に感銘を受けたことが、ここを作ったきっかけだったそうですね。

はい。それまでは特に保育に興味はなかったんです。

ーけれど、元々お母さまと奥さまが保育士をやられていたわけですよね。

そうなんです。たまたまなんですけどね。

ーたまたまとはいえ、運命的ですよね。

まぁラッキーでしたね。

ーユニフォームや、保育園内のサインには、アーティストの豊田弘治さんのアートワークが使われているのも、ピースで素敵です。

サーフィン仲間なんです。豊田さんには色々お世話になっていますね。

ー取材日の段階ではまだ建設中でしたが、この保育園の前にまた新しい空間を作られているんですよね。

はい。目の前にモッコクという木があるので、「モッコクハウス」って名付けようかなって思ってます。シンボルツリーですね、いわゆる。

ーそこではどんなことをやるんですか?

アイテムを販売したりもするんですが、それだけじゃなくてショップ兼ギャラリーのような空間にしようかなと。子供たちに向けたワークショップなんかもやれたらいいですよね。

ーどんどん仕掛けていきますね。

そうですね。いろんなことをやっていかないといけないなって思ってるので。〈ナルトトランクス〉の方も、生地から作ったりとか、色々考えてますよ。

ー最後に今後の夢というか、野望を教えてください。

大きい話でいうと、やっぱりカリフォルニアには進出したいですね。あとは海沿いにお店を出したいです。2秒で海、みたいなところに。

ーうわぁ、いいですね。

ビーチライフスタイルを提案するお店をやりたいんですよね。その場合はカフェも併設したいと思っています。

ー最近はコロナもあって、人が集まるところにお店を出すという定石が通じなくなっている気がします。

むしろ交通の便は悪い方がいいんじゃないですか。わざわざ行くようなお店じゃないとダメなんだと思うんです。あとは自分がやりたい場所でやるのが一番ですよね。

ー自分がやりたいことをして、そこにお客さんを呼ぶ、ということですよね。

あとは目の前のことでいうと、今やっていることをきちんと続けていくことですね。「MADE IN JAPAN」を残したいじゃないですか。僕の場合は親父が縫製工場をしていたことがとにかく大きかったです。僕がトランクスのブランドを立ち上げるってなったところで、工場を一から作るなんて絶対無理ですからね。ソフトウェアは元々あったわけで。

ーそれはそうですね。

足元もしっかり固めながら、新しいことも色々やるっていう感じですかね。

ーなるほど。今日は色々とお話し聞かせていただきましてありがとうございました!

この保育園の芝生が青くなるくらいのときに、また来てくださいよ。それはもう、ものすごくきれいなので。