INTERVIEW
江口洋品店 江口時計店オーナー
江口 大介 さん
「ビショップ」が初めてリリースする腕時計のコンセプトは、“ベーシックな服に合うベーシックな時計”。
年代や性別、着ている服など、何にもとらわれずに使えるエブリデイ・ウォッチを目指しました。毎日、気兼ねなく使えるエブリデイ・ウォッチとは果たしてどんな時計なのか。
ヴィンテージ時計はもちろん、ヴィンテージウェアやインテリア、クルマまで幅広い分野で独自のスタイルを確立している稀代の目利き、
「江口洋品店 江口時計店」オーナー、江口大介さんに話を聞きました。

僕は1本に絞らず、眼鏡やアクセサリーの色に合わせて時計を選ぶことが多いです。眼鏡とアクセサリーは、金、銀、黒の3色が自分の中で不可欠な色。なので、その3色に合わせた時計をローテーションしています。
〈ロレックス〉のようなスポーツウォッチ、ジュエラーが手がけたドレスウォッチ、あとは“Gショック”のようなカジュアルなものも。そういうものを手元に置いておいて、たまに入れ替えたりしながら楽しんでいます。
時計を主役にするっていう考え方にはならないように気をつけています。あとは、例えば〈ロレックス〉をつけたい日は、セオリーからするとジーンズのような道具っぽい、機能的な服を合わせるところなんですが、僕の場合はクリーンなトラウザーズを合わせたい。逆に〈カルティエ〉のようなドレスウォッチをつけるなら、ミリタリーパンツを履いたり。そういうコーディネート全体でのオフバランスが僕のファッションの考え方なんです。
毎日同じものを使うと考えると、やっぱり、時計自体が主張し過ぎないこと、機能的にちゃんと使えるっていうことが前提になると思います。
この〈セイコー〉と「ビショップ」のコラボレーションウォッチは、デザインされているものなんですが、僕が好きなドレスウォッチのような美しく見せるために作られた時計ではない。使いやすさや耐久性を追求して作られていると思うんです。要するに機能美ですよね。時計という機能を身につけるためのデザイン。そういうものにベーシックが宿る。毎日使うなら、そういう時計がしっくりくるんじゃないでしょうか。

小柄な体格の男性や、メンズライクな時計をつけたい女性に向けたボーイズサイズと呼ばれている大きさですね。大きな時計は時間が見やすいですが、僕は36mmでも少し大きく感じるため、34mmくらいの小さめサイズが好みです。これまでは38〜40mmが主流でしたが、昨年からのトレンドの反動もあり、男性でも小径サイズを着用する流れがあります。34mmは、男性が今つけるにはちょうどいいサイズかもしれません。もちろん、女性にも華奢すぎず大きすぎず、メンズライクにつけられて、ベーシックな服に合うと思います。
「江口洋品店 江口時計店」で一緒に働いてる技術者たちは、みんな〈セイコー〉に一目置いています。時計メーカーの評価は、精度のいい機械を作れるかどうかがポイントになります。その点で〈セイコー〉は世界でトップクラスの技術力を誇っていて、信頼性が高いですね。外観に現れるカッコ良さではなくて、本当にいいものを作ろうというスピリットがある。使っていて気持ちいいというのは、「ビショップ」の理念や取り扱う服と似ているんじゃないでしょうか。

「江口洋品店 江口時計店」では、主に1950~70年代のヴィンテージ機械式時計を取り扱っているのですが、時間を見るという機能において、時計は機械式である必要はまったくなくって、スマートフォンのようなデジタルデバイスに表示される時間の方が正確性は高いんです。でも、人って常に完璧なものを求めているわけじゃなくて、バックグラウンドだったり、作られたストーリーだったり、そういう部分に魅力を感じるものだと思うんです。例えば、人間でも、完璧とは言い難いけど魅力的な人っていますよね。
時計だからある程度は正確に時間を刻むことが前提なんですが、ちょっと手がかかったり、あと古いものに関しては、使われてきた歴史の雰囲気が出ていたり、そういう部分に魅力を感じる人が非常に多いんだと思います。
スティーブ・ジョブズは、圧倒的精度を誇るクォーツ式時計〈セイコー〉の“シャリオ”を愛用していたそうです。毎日同じ服を着て、日常的に行わなければならない決定の数を削ぎ落としていたというから、おそらく時計においても、ゼンマイを巻き、時間の誤差を直す手間を惜しんだのだと思います。〈コム デ ギャルソン〉の川久保玲さんは〈ロレックス〉の“エアキング”の白文字盤と黒文字盤の2種類を服に合わせて使い分けているそうです。毎シーズン、常に新しいデザインを生み出し続ける偉大なデザイナーですが、時計はこれ以上変わる必要がないと考えているんじゃないでしょうか。そういう時計の選び方、使い方には、やっぱりその人らしさが現れるんだろうなと思っています。
江口洋品店 江口時計店オーナー
1980年、東京・台東区生まれ。シルバージュエリー職人、ヴィンテージバイヤーとして活動後、2017年にヴィンテージ時計と洋服を扱う「江口洋品店・江口時計店」を東京・吉祥寺に構える。2024年に渋谷区松濤に場所を移し、時計修理工房を併設する「江口洋品店 江口時計店」としてリスタート。常時約200本のヴィンテージウォッチや、〈エルメス〉、〈カルティエ〉、〈ティファニー〉といったブランドのヴィンテージアパレル、ジュエリーがラインナップする。2025年7月には「渋谷パルコ」3階に新店舗をオープンした。