トリプルコラボレーションジーンズ、“ROSS”について。トリプルコラボレーションジーンズ、“ROSS”について。

1989年に〈エドウイン〉が、
ヨーロッパ市場向けに開発した
リラックスシルエットジーンズ “ROSS(ロス)” 。

日本国内ではわずかな期間しか
販売されなかったレアモデルが今季、
ビショップの別注プロダクトとして蘇りました。

仕掛け人はビショップのバイヤー・山本慎、
ディレクションは〈ニート〉の西野大士さん。

なぜ今、ファッションのプロたちが
“ROSS” に惹かれたのか。

プロジェクトの始まりと経緯、
そして “ROSS” の魅力について、
〈エドウイン〉のクリエイティブディレクター、
細川秀和さんを交えて語る、トークセッション。

EDWIN

細川 秀和Hosokawa Hidekazu

〈エドウイン〉クリエイティブディレクター。1990年に入社。物流センターから工場研修まで、ジーンズ作りのすべてを経験し、ジーンズの何たるかを、服飾史や文化人類学的なアプローチも含めて多角的に捉える生き字引的存在。

NEAT

西野 大士Nishino Daishi

淡路島出身。〈ブルックス ブラザーズ〉のプレスを経て独立。2015年にパンツ専業ブランド〈ニート〉を立ち上げる。現在はプレスオフィス「にしのや」の経営も手掛け、国内外20以上のブランドのPR業務も担当。元小学校教師。

Bshop

山本 慎Yamamoto Makoto

大手セレクトショップのバイヤーを経て、2021年「ビショップ」に入社。仕入れ企画として国内外を飛び回り、現場を率いる。自社のコンセプトに沿ったベーシックさや、ものづくりの過程、アイテムの背景を重視した物選びが身上。

〈エドウイン〉と〈ニート〉を引き合わせた、
ビショップの企み。

プロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。

山本

「ビショップ」ではシーズンごとに商品企画会議をしています。その場で、〈エドウイン〉のジーンズと、西野さんを掛け合わせたら面白いものができそうという話になりまして。その時点では、単純に“面白そう”ってだけでした。

それでまずは「なにかやりませんか?」と西野さんに相談したのが始まりです。

ビショップでは、〈リー〉や〈ラングラー〉など、〈エドウイン〉社のブランドをよく取り扱っていますよね。

山本

そうですね。最初は〈エドウイン〉ブランドに決め込んでいたわけではなく、どのブランドと掛け合わせるか、というところからスタートしてます。西野さんと相談して、今回は〈エドウイン〉がいいんじゃないかということになりました。

西野

〈リー〉や〈ラングラー〉への別注アイテムはよく見かけるんですが、〈エドウイン〉の別注アイテムって、あまり見たことないかもなと思いまして。人と違うことをするのが好きなんです。あまのじゃく的な気質もあって(笑)。

確かに〈エドウイン〉といえば “503” のようなロングセラーモデルの印象が強くて別注はあまり思い浮かびませんね。

細川

〈エドウイン〉でも別注はやっています。〈リー〉や〈ラングラー〉の別注はいわゆるアメリカンデニムブランドのイメージに沿ったものが多いのですが、〈エドウイン〉はもう少しニュートラルな印象をもたれているのかと感じています。日本の若者のカルチャーに寄り添ってきたので、何をやっても許される、成立する感じがあるんです。〈リーバイス〉や〈リー〉ではアイデンティティが強すぎて混じり合わないようなことでも〈エドウイン〉なら柔軟に合わせられると思っています。今、やってみたいのは純文学と〈エドウイン〉についてとか。

面白そうですね。幅広く対応できる理由はどのように分析していますか?

細川

元々〈エドウイン〉というブランドはアメリカンカルチャーを日本人が表現したもので、昔はメイド・イン・ジャパンだということがネガティブだったんです。そのことを隠すために、さまざまなカルチャーと並走しながらブランドをブラッシュアップしてきたというバックグラウンドがあるので、元々自由度が高い。ニュートラルなプラットフォームなんです。

西野

僕も若い頃は、〈エドウイン〉てアメリカのブランドだと思ってたんで(笑)。中学生の時、テレビCMにブラピ(ブラッド・ピット)が出てて。あんなの観たら「〈エドウイン〉ていうアメリカのデニムブランド、めっちゃかっこいい」っていう感覚になりますよね。〈エドウイン〉さんとものづくりをしてみたいって言ったのはそんな記憶もあったからです。

細川

それで、西野さんがたくさん古着を集めて、いろいろと見てきたなかで「これがいい!」って持ってきたのが “ROSS” だったんです。我々の感覚としては「まさかコレが来るか!?」です(笑)。

西野さんはなぜ “ROSS” を選んだんでしょうか?

西野

感覚だけです。“ROSS” というモデル名も知りませんでした。情報がとにかく少なくて。オークションサイトやフリマサイトで、「アメリカ製もあるんだ」とか発見しながら良さそうだなと思うものを買い集めていって、“ROSS” を見つけたんです。

“ROSS”で検索しても情報はあまり出てこないですよね。

西野

オークションサイトやフリマサイトで少し出てくるくらいです。僕が買ったものも、商品の説明には“ROSS”とは書いていなかったと思います。

色々集めた中で、特に “ROSS”が良かった理由はなぜでしょうか?

西野

ここが他のモデルよりも良い、というよりは、なんとなく僕らっぽい。〈ニート〉っぽさがあったんです。〈ニート〉っぽさの正体がなんなのかは、つい先ほど、インタビュー前に細川さんとお話ししている時にようやく明らかになりました。

ポイントはヒップのカッティングです。〈ニート〉では、デニムはやってないのですが、コーデュロイなどの素材で5ポケットパンツは作ったことがあって。そういったときに最初に研究するのって、やっぱり〈リーバイス〉の“501”になってくるんですが、突き詰めていくと、似合う人と似合わない人に分かれてしまうんです。その理由はお尻のカッティングなんです。カーブが強くてギュっと入り込んでいる。それを解消するために、ヒップのパターンをストレートまではいかないんですけど、少し緩やかにしたことがあったんです。 “ROSS”にも同じような特徴があって、「一緒じゃん!」と驚きました。それが、履いたときに僕らっぽいと感じた理由だと思います。

細川

このヒップのカッティングで、なんともいえない雰囲気が出るんです。〈エドウイン〉の“503”などのジーンズと比べると、少しの違和感というか、ゆるさがあります。

ヨーロッパ市場に向けて
開発された
アンチフィットジーンズ “ROSS”。

そもそも “ROSS” とはどんなモデルだったんでしょうか。

細川

元々は1989年に誕生したヨーロッパへの輸出モデルです。作業着だったジーンズがファッションになって、デザイナーがジーンズをデザインし始めて、1980年代の後半はヨーロッパジーンズブームだったんです。〈マリテ+フランソワ・ジルボー〉とか〈C.P. カンパニー〉とか。“ROSS”はそんな時代に生まれたヨーロピアンテイストのアンチフィットジーンズです。日本では1992年から3年ほどしか販売されていません。

西野

最初はこれをベースに〈ニート〉らしさを加えることも考えたんです。たとえば、タックを入れるとか。でも、自分がお客さんだったら、それは必要ないな、と。それでコラボレーションというよりは、僕がディレクション、もっというとピックアップさせてもらって、お取り組みの印として屋号だけつけさせてもらうことに。〈エドウイン〉が作ってきたものを、選び抜いて復刻させてもらうという内容に辿り着きました。

山本

ベースにしたオリジナルの古着を履いた時、すごく良かったんですよ。だから、このサンプルを基準にサイズ展開していただいてますが、基本的には〈エドウイン〉さんにお任せでした。

当時の“ROSS”の資料

90年代には廃盤になっていたモデルを復刻したということなんですね。

山本

手を加えていない、そのままの姿が今の気分にフィットしていたんです。

西野

今はクラシックなタイプから、かなりダボっと太いタイプまで、ジーンズもいろいろあるんですが、これはちょっとゆるくて、丁度いいんです。当時でいうとかなり太いものだったと思うのですが、今の感覚からすると極端に太すぎなくて、ちょっとゆるい。そういうのって意外にないんです。あまりないフィット感。それがすごく新鮮に感じたんです。

細川

ヨーロピアンカジュアルが全盛の時に生み出されたモデルなのでヨーロッパのブランドをたくさん取り扱っていらっしゃる「ビショップ」のラインナップに溶け込むんだと思います。我々〈エドウイン〉がいつも通り仕事をこなしていったとして、“ROSS”を復刻させることは絶対ないと思います(笑)。

再現するのは難しいですよね?

細川

難しいです。30年ほど経っていますからね。30年くらい前のものを今やろうと思ったらすごく大変です。当然、青焼き型紙も残っていない。オリジナルをもとに、新たにパターンを起こしています。

自分のところのブランドだから、同じの作れって言われたらできるはずなんですけど、これはよく再現したと思います。

西野

バックラベル以外見分けがつかない(笑)。完全復刻ですね。

西野さんに履いていただきました。

たしかに、絶妙なシルエットですね。

西野

めちゃくちゃいいですね。

山本

すごくかっこいい。本当に、何も気にせず履いて欲しいです。何にでもミックスして履いてもらえると思います。

細川

超いいです。実際に履いてみると、すごく納得感があると思います。店頭でぜひ履いてみて欲しいですね。

西野

〈エドウイン〉さんのクオリティ、本当にすごくないですか? この価格で、このクオリティができることにびっくりしました。

細川

企業が工場を持たないことが多い時代の中、〈エドウイン〉は工場を持ち続けています。だからこそ品質の安定性がすごく高く、生産性も高いので、ある意味低コストにオペレーションができてハイクオリティに仕上げることができています。「MADE IN JAPAN」は品質が高いといわれますが、〈エドウイン〉はもっと高いです。〈エドウイン〉の良さは長年履き続けるとわかってくるんです。3・4年履くと、「そういえば全然糸切れもないし、ちゃんとしてるな」と気がつくと思います。それはお客さまがお店で商品を買うときにはわからないことなので、これをどう伝えていくかを課題にしています。

あえて変えたところはありますか?

細川

基本的にはないですね。シルエットも生地の風合いも。フラッシャーも当時と同じ雰囲気を再現しています。

西野

山本さんとフラッシャーも作りたいって言って、フラッシャーも作ってもらったんです。色はネイビーにして、もともと“RETRO JEANS”と書かれていた部分を“NEAT JEANS”に変えました。あと、モデル名の “ROSS” が〈ニート〉のロゴのフォントになっています。

重ねて縫い付けた
大胆なデザインの
バックラベル

そんな中で、気になるのはバックラベル。〈エドウイン〉のロゴが刻印された革パッチの上に〈ニート〉の革タグが重ねて縫い付けてあるのには驚きました。

西野

「タグ、どこにつけようか」というお話しになった時に、〈エドウイン〉さん側からアイデアを提案いただきまして。

細川

1980年代後半~90年代中盤まで、“メイド・イン・イタリー”というシリーズをやっていたのですが、そのバックラベルがレザーの上に、メタルパーツのロゴを貼り付けたデザインだったんです。その立体感、凹凸感を取り入れたらどうかとなりまして。

山本

ダメ元で提案してみたらOKが出ました。

細川

面白いですよね、これ。

山本

先ほどお話しいただいた、〈エドウイン〉の懐の深さが現れたディテールです。

細川

まぁ、ブランドからすると、バックラベルは当然重要なんですが、それよりももっと大事なのはヒップポケットのステッチなんです。ほかのジーンズブランドでも、ベルトで隠れちゃう仕様もあるくらい。例えば1950年代、大戦後のマーケティングって、カウボーイやロデオの世界観。当時人気だったロデオの大会などで馬にまたがったときにより観客にアピールするなら、ヒップポケットが重要だったわけです。バックラベルはベルトを通したら見えないものですし、そこで遊び心を表現するのは我々としてはNGではないんです。

西野

コインを入れられるラベルもありましたよね?

細川

ありました。コインローファーに着想を得た“アイビー ジーンズ”。ヨーロッパのジーンズブランドが世界的なブームになっていた時代、ブランドが乱立していて。みんな個性のアピールで競い合っていたんです。そんな時代に生まれた、遊び心あるディテールです。若い人から見ると、すごく新しいだろうなと思います。

バックラベルの大胆なデザインも、〈エドウイン〉の歴史を知れば納得です。

細川

このジーンズには〈エドウイン〉が辿ってきた時代背景が凝縮されてるわけです。当時のデザインを今こうやって引き出して「これ面白いよね!」って言ってもらえるのはすごくありがたい。我々のヘリテージに新しい価値を持たせ、もう一度魂を吹き込んでもらっている。ぜひ沢山の人に見ていただきたいですね。

Bshop Exclusive

NEAT × EDWIN‘‘ ROSS ’’

¥27,500

2color

MenWomen

01Silhouette

シルエットは、腰回りがゆったりとしたワイドなテーパード。古着をもとに、新たにパターンを起こし“ROSS”のシルエットを完全復刻。当時としてはかなり太いシルエットだったそうですが、今の感覚からすると極端に太すぎず、少しゆるくて丁度いいフィット感です。

02Back Label

〈エドウイン〉のロゴが刻印された革パッチの上に、〈ニート〉の革タグを重ねて縫い付けた、立体感のある大胆なデザインのバックラベル。シルエットも生地の風合いもオリジナルを徹底的に再現した中で、〈エドウイン〉の懐の深さが現れている、遊び心のあるディテールです。

03Color

オリジナルの色落ちや風合い、ヴィンテージ感を再現した「BLUE」と、ジーンズを一から育てたいお客さまに向けた「INDIGO」の2カラー。お客さまのスタイルに合わせて、お好きなほうをお選びいただけます。

NEAT×EDWIN “ROSS”

LOOK

“ROSS”という名前にちなんで、
ロサンゼルスの街で人々に声をかけ、
ご自宅にお邪魔し、LOOKを撮影しました。

ロサンゼルスの日常に溶け込んだ
“ROSS”をぜひご覧ください。