〈エドウイン〉と〈ニート〉を引き合わせた、
ビショップの企み。
プロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください。
山本
「ビショップ」ではシーズンごとに商品企画会議をしています。その場で、〈エドウイン〉のジーンズと、西野さんを掛け合わせたら面白いものができそうという話になりまして。その時点では、単純に“面白そう”ってだけでした。
それでまずは「なにかやりませんか?」と西野さんに相談したのが始まりです。
ビショップでは、〈リー〉や〈ラングラー〉など、〈エドウイン〉社のブランドをよく取り扱っていますよね。
山本
そうですね。最初は〈エドウイン〉ブランドに決め込んでいたわけではなく、どのブランドと掛け合わせるか、というところからスタートしてます。西野さんと相談して、今回は〈エドウイン〉がいいんじゃないかということになりました。
西野
〈リー〉や〈ラングラー〉への別注アイテムはよく見かけるんですが、〈エドウイン〉の別注アイテムって、あまり見たことないかもなと思いまして。人と違うことをするのが好きなんです。あまのじゃく的な気質もあって(笑)。
確かに〈エドウイン〉といえば “503” のようなロングセラーモデルの印象が強くて別注はあまり思い浮かびませんね。
細川
〈エドウイン〉でも別注はやっています。〈リー〉や〈ラングラー〉の別注はいわゆるアメリカンデニムブランドのイメージに沿ったものが多いのですが、〈エドウイン〉はもう少しニュートラルな印象をもたれているのかと感じています。日本の若者のカルチャーに寄り添ってきたので、何をやっても許される、成立する感じがあるんです。〈リーバイス〉や〈リー〉ではアイデンティティが強すぎて混じり合わないようなことでも〈エドウイン〉なら柔軟に合わせられると思っています。今、やってみたいのは純文学と〈エドウイン〉についてとか。
面白そうですね。幅広く対応できる理由はどのように分析していますか?
細川
元々〈エドウイン〉というブランドはアメリカンカルチャーを日本人が表現したもので、昔はメイド・イン・ジャパンだということがネガティブだったんです。そのことを隠すために、さまざまなカルチャーと並走しながらブランドをブラッシュアップしてきたというバックグラウンドがあるので、元々自由度が高い。ニュートラルなプラットフォームなんです。
西野
僕も若い頃は、〈エドウイン〉てアメリカのブランドだと思ってたんで(笑)。中学生の時、テレビCMにブラピ(ブラッド・ピット)が出てて。あんなの観たら「〈エドウイン〉ていうアメリカのデニムブランド、めっちゃかっこいい」っていう感覚になりますよね。〈エドウイン〉さんとものづくりをしてみたいって言ったのはそんな記憶もあったからです。
細川
それで、西野さんがたくさん古着を集めて、いろいろと見てきたなかで「これがいい!」って持ってきたのが “ROSS” だったんです。我々の感覚としては「まさかコレが来るか!?」です(笑)。
西野さんはなぜ “ROSS” を選んだんでしょうか?
西野
感覚だけです。“ROSS” というモデル名も知りませんでした。情報がとにかく少なくて。オークションサイトやフリマサイトで、「アメリカ製もあるんだ」とか発見しながら良さそうだなと思うものを買い集めていって、“ROSS” を見つけたんです。
“ROSS”で検索しても情報はあまり出てこないですよね。
西野
オークションサイトやフリマサイトで少し出てくるくらいです。僕が買ったものも、商品の説明には“ROSS”とは書いていなかったと思います。
色々集めた中で、特に “ROSS”が良かった理由はなぜでしょうか?
西野
ここが他のモデルよりも良い、というよりは、なんとなく僕らっぽい。〈ニート〉っぽさがあったんです。〈ニート〉っぽさの正体がなんなのかは、つい先ほど、インタビュー前に細川さんとお話ししている時にようやく明らかになりました。
ポイントはヒップのカッティングです。〈ニート〉では、デニムはやってないのですが、コーデュロイなどの素材で5ポケットパンツは作ったことがあって。そういったときに最初に研究するのって、やっぱり〈リーバイス〉の“501”になってくるんですが、突き詰めていくと、似合う人と似合わない人に分かれてしまうんです。その理由はお尻のカッティングなんです。カーブが強くてギュっと入り込んでいる。それを解消するために、ヒップのパターンをストレートまではいかないんですけど、少し緩やかにしたことがあったんです。 “ROSS”にも同じような特徴があって、「一緒じゃん!」と驚きました。それが、履いたときに僕らっぽいと感じた理由だと思います。
細川
このヒップのカッティングで、なんともいえない雰囲気が出るんです。〈エドウイン〉の“503”などのジーンズと比べると、少しの違和感というか、ゆるさがあります。