Beyond Fashion

and the Unchanged

時とともに成熟する

GALLEGO DESPORTESという装い

ビショップが創業間もないころから、ともに歩むGALLEGO DESPORTES。

ブランドを主宰するファビアン・デスポートさんとヴァージニー・ギャレゴさんは、20年ほど前に美しい海と歴史ある建物が織りなす古都ヴァンヌに移り住み、
メイド・イン・フランスの洋服づくりに勤しんでいます。

ヴァンヌという町で暮らすこと、洋服づくりへの想いと哲学、そして豊かなライフスタイルについて、ふたりが暮らすヴァンヌでお話をうかがいました。
そこには洋服に触れるだけではうかがい知れない物語がありました。

案内してもらったヴァンヌの町。市場には手長海老や牡蠣など、港町ならではの魚介がたくさん並んでいました。

案内してもらったヴァンヌの町。市場には手長海老や牡蠣など、港町ならではの魚介がたくさん並んでいました。

パリからヴァンヌへ

「地図を見るまで、フランスのどこにヴァンヌがあるか知らなかったんだ」

そうおどけながら話すのはファビアン・デスポートさん。そんな見知らぬ町を知ったのは、まだパリで暮らしていたときのこと。きっかけは2001年に起きた9.11。世界のパラダイムが激変するなかで、ファビアンさんとパートナーのヴァージニー・ギャレゴさんは、このままパリで暮らし続けることに疑問を感じ始めていました。ふたりの子どもたちのことやブランドの未来を考えると、何よりも変化が必要だと。

そうした想いを巡らせている最中に友人から知らされたのが、ヴァンヌという2000年ほどの歴史がある町。その町がどこにあるのかは知らないけれど、百聞は一見にしかずと、ヴァンヌが新たな拠点になるのかを家族で確かめに
行くことにしました。

ブルターニュ地方に位置する古都ヴァンヌは、表情豊かな小島群が点在するモルビワン湾への玄関口となる港町。
町の歴史のハイライトは、ブルターニュ公国の政治の中心地として繁栄した14世紀。その名残となる旧市街を取り囲むように広がる城壁、そしてその城壁を飾るかのごとく季節の花々に彩られた庭園は市民の憩いの場となっています。また、町のいたるところに木組みの民家が建ち並ぶ美しい町並みは訪れる人たちを魅了します。
子どもたちのことを考えると申し分のない環境。同時に、2時間ほどクルマを走らせれば、工業地帯が広がり、ビジネスの面でも大きなメリットが感じられたそう。町の下見から間もなく、一家は住み慣れたパリを離れ、ヴァンヌへと移り住むこととなりました。

偶然から始まった物語

ファビアンさん、ヴァージニーさん曰く「町の中にホリデーが溢れている」というヴァンヌの町に、ふたりは2つのショップを構えています。

ひとつは、GALLEGO DESPORTESの直営店「Noë」。まだふたりがパリのファッションスクールの学生だったころ、ただ自分たちがつくった作品を紹介するために展示したことで始まった「GALLEGO DESPORTES」という物語。そのときの気持ちが色褪せることなく感じられる空間です。

「1990年からわたしたちは共同作業をしていて、その集大成として93年に作品発表の展示をしたんだ。ブランドを立ち上げようなんて想像もしていなかったよ。だけどそのことを取材してくれた『ELLE』誌を見た人から、『買いたい!』って言われてね。その日の夜から慌てて縫製を始めて量産品をつくるようになったのさ。それがブランドの始まり(笑)」とファビアンさんは当時を振り返ります。

「ビショップの前代表の森さんと出会ったのも、このころよね。『GALLEGO DESPORTES』は来年でブランドスタートから30年。ビショップも、同じですよね」とヴァージニーさんも続けます。当時と違うことは、直営店のほかにもうひとつショップを構えていることかもしれません。ふたりのセンスを詰め込んだようなライフスタイルショップ「Noë Maison」。

「ここは、わたしたちが素敵だと思うハウスホールディングスなどをセレクトして取り扱っているけど、日本の生活には少しヴィヴィッドかもしれないわね(笑)」とヴァージニーさん。アパレルだけでなく、ライフスタイルまでもをトータルで愉しんでほしい。そんな想いからこのショップをスタート。変わらないために変化し続ける。この姿勢がGALLEGO DESPORTESの鮮度を保ち続けられる秘密なのかもしれません。

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Less is More

それらショップのほど近く(歩いて2分ほどとのこと)に位置するアトリエで、GALLEGO DESPORTESのウェアがデザインされています。

GALLEGO DESPORTESのデザインは、「Simple」というワードなしに語ることはできません。ファーストコレクションから一貫したスタイルのインスピレーションは、どこから来るのでしょうか。

「わたしたちは、“エビデンス・デザイン”と呼んでいるんだけど、ヴィンテージからワークウェア、コスチュームまで明らかに目にしたことがあるデザインをリサーチして、そこから構築していくんだよ」
インタビュー中にとても印象的な言葉を耳にしました。それは、「SIMPLE IS THE END OF THE PATH」というGALLEGO DESPORTESの哲学を象徴するフレーズ。ヴァージニーさんは、このことについて次のように話します。

「わたしたちのクリエーションの目指す先は『シンプルさ』。それもさりげなく美しいことが真の美しさだと考えているの。シンプルであることはいたって普通のこと。でも、その言葉とは裏腹に、実は複雑なの。さまざまなものを見て、経験してないと表現するのが難しい。凝ったデザインをつくるほうがよっぽどかんたん。シンプルなものをつくるほうが何倍も難しいと感じるわ」

ふたりがエビデンス・デザインに軸足を置くのはそれゆえ。天然素材を用い、時間とともに成熟することで時間の消費されない長く着用できるデザイン。これこそがGALLEGO DESPORTESが目指している姿。

ヴァンヌという町でクリエイションを行うことは、服づくりにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。そんな問いかけに、少し間を置いて「ヴァンヌに拠点を移してからは、ブルーを使う機会が増えましたね」とヴァージニーさん。ブルーだけでなく、ヴァンヌの町に溶け込むような“静かな色”、それがGALLEGO DESPORTESのラインナップに加わりました。

「この町でストレスレスな生活がおくれていることや、無駄な時間がなく、ゆったりとした時の流れのなかで、ものづくりと向き合えていることが影響しているのかもしれないわね」

映画のセットのように

ワークとライフの境界が溶け合うなかで、充実したクリエイションが行えているのは、そのバランスのよさとベースとなる日常があってこそ。

そんなふたりに、普段の生活のルーティンや大切にしている習慣を聞いてみると、いのいちばんに返ってきた答え、それは「朝食は重要よね」という言葉でした。ランチはもっぱらアトリエそばのダウンタウン。ディナーは気の置けない友人たちとの語らいの時間。友人たちとの時間を大切にするふたりにとって、唯一ゆっくりと過ごす食事。それが朝食なのです。「もちろん、ガーデニングや若さを保つためにエクササイズもするけど、あとはコーヒー&シガレッツね!」とヴァージニーさんは笑います。

いつもユーモアを忘れない、ファビアンさんとヴァージニーさんのプライベートの装いについても聞いてみると「スタイルとしては、ホワイトデニム、ストライプシャツ、日本製のコットンシャツ......。選ぶものとして一貫しているのは、主張が強くなく、控えめなものを好んでいることかな。ビショップから戻ってきた自分たちの服も着るけど......というのは冗談として(笑)、もちろん自分たちのブランドのものも着るけど、研究を兼ねて他のブランドを着ることが多いかもね。シンプルな洋服をつくれるデザイナーになりたいから。とくにシャツを極めたいけど、ディテールがとても難しいの。もう何年も服づくりをしているけど、わたしたちはまだまだビギナーね。」とヴァージニーさん。

センス溢れるふたりの世界観が色濃く反映される住まい。いま暮らす邸宅を見つけるまでに紆余曲折があったそうです。不動産屋と町を巡り案内された二軒の家(ふたりの言葉を借りるならば、キレイな家とボロボロな家)。

「一軒はすぐに住むことができそうだったけど、もう一軒は住むまでに相当手を入れる必要があったんだ。でも、どうしても選べなくてね。幸いにも二軒が隣り合わせという奇跡的な立地だったから、それぞれを繋いで一軒の家として住むことにしたんだ(笑)」とファビアンさん。
ボロボロの方は、元は厩舎だった名残で庭側にしか窓がない造りになっているのが、お気に入り。住み始めてからもライフスタイルや気分に合わせて何度も改装をしながら10年ほど住み続けている。
「改装のときは、まず壁の色から決めるの。それから部屋を色のイメージに合わせていくのよ」とヴァージニーさんが改装のコツを教えてくれました。しかし、こんな素敵な家も来年の秋には手放すとのこと。

「次の家は、キューバのような色の家にしようと思っているの」と新居の構想を語ってくれました。改築にふたり独自のこだわりがあるように、インテリアにもこだわりがありました。それは、「映画のセットのような、ストーリーのあるインテリアにする」ということ。

「そのひとつのコンセプトからブレなければ、家具はフリーマーケットで手に入れたものからデザイナーのものまで、ミックスしてもきちんと整って見えるだろう?」とファビアンさん。

ふたりの話から感じることは、GALLEGO DESPORTESはデザインされたものではなく、ファビアンさんとヴァージニーさんそのものということ。つまりは、ファビアンさん、ヴァージニーさんが目にしたこと、経験したことの集積の先にあるもの、それがGALLEGO DESPORTESということなのです。

大学の夏休み中、Noëの手伝いをしていた娘のポピーさん。ホワイトとネイビーのシンプルなスタイルが、ファビアンさん、ヴァージニーさん譲りの素敵な装いでした。

チェック&プリント

「世の中に暗いニュース、悲しいニュースが溢れているタイミングだったが、湖に石を投げるようなものかもしれないけれど、ポジティブな空気を届けたかった。」と、2022年のA/Wシーズンは明るさが感じられるチェックやプリントがアクセントになったアイテムが揃っています。とくにこだわったのがタータンチェック。クラシックなタータンチェックの柄を3倍ほど拡大した個性的なデザインになっています。そして、もうひとつ注目の素材がフランス製のプレミアムなツイード。ココ・シャネルへのトリビュートとして取り入れたもので、「美しいプレミアムな素材を使って着心地のいいシンプルな洋服をデザインしたかった」とヴァージニーさん。プレミアムクオリティの素材をシンプルなデザインに落とし込んだコレクションは必見です。ぜひ店舗に足を運んでご覧ください。

GALLEGO DESPORTES
2022AW COLLECTION

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