履いて整うサンダル。
FOOTWORKS
New Sandals for the First Time in 2022 Summer
オーダーメイドのインソールを制作する専門店「FOOTWORKS」が、今春、新しいサンダルをリリースする。履くことで重心を補正し、身体の歪みを整え、正しい歩き方へと導くことで、むくみや肩コリ、腰痛といった慢性的な不調を改善するという。履いて整うサンダルとは、いったいどんなものなのか。そのメカニズムが知りたくて、「FOOTWORKS」の主宰、森 健さんを訪ねた。
無機質ながら落ち着いた雰囲気の「FOOTWORKS」の店内。オーダーメイドシューズのサンプルがずらりと並ぶほか、石塚元太良のプリントやピーター・アイビーのグラス、スティーブ・ハリソンの花器などが飾られていた。
「FOOTWORKS」のサンダルを
買い付けた理由。
「『FOOTWORKS』のサンダルを初めて見たのは〈COMOLI〉の展示会に伺った際です。デザイナーの小森啓二郎さんをはじめ、スタッフのみなさんが揃って履いているのを見て、興味を持ちました。以前から小森さんが個人的にオーダーしているインソール職人がいることは知っていたのですが、このサンダルもその方によるものだと。これは面白そうだなと思い、すぐに『FOOTWORKS』さんへ問い合わせをしたんです」
このサンダルにいち早く目をつけ、取り扱いを決めたバイヤー・山本慎は、「FOOTWORKS」との出会いをそう振り返った。すぐにアポイントを取り、サンダルの作り手、森 健(もり たけし)さんの元を訪ねたという。
「実際にサンプルを手に取って、最初に感じたのは、現在の市場にはない製品だなということ。これまでの買い付けでは、靴として、サンダルとして、デザインだったり作りの良さだったり、見た目が魅力的であることを前提に、履き心地などを確認していたと思います。『FOOTWORKS』のサンダルは、機能から発想されているにもかかわらずとても美しかった。こういうプロダクトにはなかなか出会えない。そう思って取り扱いを決めました。実際にフィッティングして、正しいサイズを履いていただきたいという思いから、オンラインでの販売はせず、店舗のみで展開します。いずれは森さんをお店に招いて説明・即売会なども行いたいですね」
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取材に同行したBshopのバイヤー・山本慎
本当は作るつもりじゃなかった。
オーダーメイドのインソール専門店「FOOTWORKS」は、東京・南青山にある。2011年に最初の店を下北沢にオープンした頃は、知る人ぞ知る存在だったが、インソールによるバランス補正によって不調を改善したという体験者の談は、人から人へじわじわと広がり、いまや名うての店。完全アポイント制のこの場所を訪れる客は後を絶たない。
「本当は作るつもりじゃかったんです」。サンダルについてのインタビューに開口一番、そう答えたのは、「FOOTWORKS」の主宰にして、サンダルの開発者、森さんだ。続けて理由を話してくれた。
「私はこれまで、オーダーメイドでインソールを作ってきました。人は立っているとき、足しか地面についてないんです。身長や体重は人それぞれですが、百数十センチで数十キロ。そのすべてを二十数センチで支えているわけです。全身の表面積でいえば、1%程度。そこにかかる体重のバランスが崩れると、姿勢も崩れてしまい、膝だったり、腰だったり、肩だったりに不調が出る。だから、人ぞれぞれの癖に合わせて作った、バランスを補正する形状のインソールを靴に入れていただくことで、身体を支える土台を正しい状態に導く、ということをしています」
そう言ってこれまでにインソールをオーダーした顧客たちの足型を見せてくれた。
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インソールをオーダーする際に取るフットスタンプ。人それぞれのバランスの崩れやクセを確認できる。
「青いインクの色の濃さで、どの部分に体重が乗っていて、どう傾いているのか、左右のバランスなどが確認できます。これを見れば、歪みや捻れは人それぞれだと理解していただけますよね。バランスの補正には繊細な見極めが必要で、補正に必要な形状も十人十色です。靴よりもホールドが弱くて足がずれやすいサンダルで、全身を正しく支えるだなんて無理に決まっていると考えていました。最初に『作るつもりはなかった』とお話ししたのはそういう訳です」
バランスが整うフォルムの秘密。
「試作を初めたのは2年前です。きっかけは、知人に何度も頼まれて、根負けした感じで。その方は私と足のサイズが同じくらいだったので、自分の足で試しながら作ってみようかと。それが出来上がってみたら想像以上に良いものが出来たんです。オーダーしてくださった方からの評判も上々で、ぜひ量産品として製品化すべきと背中を押されました。それで、昨年、近しい顧客にお試しいただいて、ブラッシュアップを重ねてようやく納得いく状態になったので、正式にリリースすることになりました」
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「FOOTWORKS」主宰の森健さん
「『FOOTWORKS』をオープンしてから10年以上が経ちましたが、毎日、オーダーメイドでインソールを作っていると、多くの人に共通する問題が見えてきました。また、それを解消する形状もずっと頭のなかにありました。それを形にしてみたんです。オーダーメイドインソールが自分の知識や経験、技術を100%注ぎ込んだものだとして、サンダルでは削ぎ落として30%くらい。それが逆に功を奏してコンセプトが明快になりました」
サンダルのデザインは極めてシンプル。少し厚めのビブラムソールのうえに、土踏まずをはじめとする足裏の3つのアーチをサポートする形状のレザーのインソールが載っている。マットな質感のアッパーはイタリアのタンナー〈グイディ〉のレザーを使用、足首のナイロンテープは片手で締め加減が調整可能だ。
「必要な機能をそのまま形にしています。僕はデザイナーではないので、装飾するというよりは、無駄なもの、嫌いな質感を削ぎ落としていくというアプローチでした。どちらかと言えば“道具”を作るような感覚です。特徴的なのは、かかとが高いこと。爪先よりもかかとが1.5cmくらい高くなっていて、この傾斜が適度な前傾姿勢を作り、指先を使って地面を捉える感覚を生みます。その結果、筋肉や関節の捻れが解消して、真っ直ぐに足を出しやすくなって、姿勢も歩き方も改善するんです」
そう話しながら、森さんは筆者のかかとの下に数枚重ねた板を入れて、傾斜がついた状態を作ってくれた。ヒールが高いと歩きずらいのでは、と思っていたが、体験して納得。適度な傾斜があると、フラットな状態よりもあきらかに自然に立っていられる。
「現代の人には、この前傾が足りてないことが多いんです。もちろんオーダーメイドの方が細かいバランスを調整できますが、既製品であるこのサンダルでも、かなり多くの方が歩き方や姿勢を改善できるはずです。できるだけたくさんの方に体験していただけるよう、22.5cmから0.5cm刻みで28.5cmまで。13サイズを展開します」
PROFILE
森 健 Takeshi Mori
オーダーメイドのインソール専門店「FOOTWORKS(フットワークス)」の主宰。日本におけるインソール制作の第一人者、森 公一さんを父に持ち、幼少期より重心の補正や、歩き方の重要性に興味を抱く。大学卒業後にフットケア先進国、ドイツへ留学し2年間、インソールについての知識を深める。帰国後「FOOTWORKS(フットワークス)」をオープン。インソール制作と合わせて、より効果的な歩行についてのレクチャーにも力を入れている。身体に不調を抱える人から、パフォーマンス向上を目的とするアスリートまで、幅広い顧客を抱える。
STORE INFORMATION
FOOTWORKS
住所 : 〒107-0062 東京都港区南青山6-11-3 神通ビル207
アクセス : 東京メトロ各線 表参道駅より徒歩9分
電話番号 : 03-6434-1098(※完全予約制)
URL : https://www.footworks-tokyo.com