BOWTE THE 1st COLLECTION SPRING&SUMMER 2023

2023年春夏にデビューしたブランド、BOWTE(バウト)。ビショップでも今季よりお取り扱いがスタートいたしました。
今回はデビューを記念して、デザイナー 靱江千草さんにブランドやご自身のことについてインタビューをさせていただきました。
2023春夏コレクションのLOOKと共に、ぜひご覧ください。

INTERVIEWwith CHIGUSA UTSUBOE

デザイナー 靱江千草

PROFILEデザイナー 靱江千草

DRAWER(ドゥロワー)や大手アパレルなどで、約20年間デザイナーを経験。一時は出産を機に一線から退いていたが、フリーランスのデザイナーとして2017年より再始動。丁寧に妥協ないものづくりをしたいという強い想いから、ブランド BOWTE(バウト)を立ち上げた。

Q1ブランドを立ち上げたきっかけや
経緯を教えてください。

DRAWERを退職後、結婚・出産・子育てのために4年くらいのブランクがありました。その後、フリーランスで再活動するようになって、さまざまなセレクトショップのオリジナルを担当させていただきました。
ブランドの要望に応えながら、次から次へと湯水のごとくデザインをしていましたが、一つ一つ丁寧に精魂を注いでつくっても、量産化され売れ残ってしまったものは最終的にアウトレットにいってしまう。反省する機会はあっても、どこか「重大な責任が自分にある」という実感が薄かったんです。それが段々、エシカル消費とかサスティナブルと言われる今の背景と、自分に子どもができたことも合わさり、時代に逆行してしまってるように感じて…。あと、自分が支持して歩んできた“丁寧なものづくり”という観点でのファッションが、フリーランスのデザインでは活かせないなと思ったんですよね。
そういうこともあって、自分でつくったものは、自分の名前で責任をもって、欲しいと思っていただける方に、その数だけ届けばいいなと思うようになりました。

Q2BOWTEは
どんなブランドでしょうか。

BOWTEのアイテムには、メンズウェア全般への憧れ、自分の中の思い出、尊敬する数々のデザイナーや芸術家へのオマージュ、ノスタルジーな想いなどを込めています。その想いを、原料・パターン・縫製・付属・デザイン全てにこだわり、丹念に妥協なく、我々が技術的に深く信頼を置く日本国内生産にこだわって、丁寧なものづくりをお届けしたいと思っています。

Q3靱江さん的に言うと、
BOWTEはどんなテイストですか?

音楽全般がとにかく大好きで、特に憧れているのは、ビートルズをはじめとした60’,70’のイギリスのロックミュージックなんですが、そういうテイストが服から感じられるといいなと思っています。
音楽好きなのは、昔の友人からの影響も大きくて、そこで色々な音楽を吸収していきました。若い頃は“FUJI ROCK FESTIVAL”に行ったり、家族ができたら“朝霧JAM”に行ったり。常に生活に音楽が根付いている感じです。
また、これまでも尊敬する巨匠デザイナーは沢山いるのですが、その中でも最も尊敬と影響を受けていると断言したいのは、自分の業界歴で長年師事したDRAWER時代の大先輩の吉武さんです。原料は勿論、裏の仕様や色使いに至るまで抜かり無くこだわった丁寧な服づくりは先輩方の築いて来られた洗練されたセオリーで、そういった事から吸収したものを日常的に服に落とし込んでおりますし、これからも反映してきめ細かな配慮をしていきたいなと思っております。

Q4ブランド名の由来は?

メンズドレススタイルの“ボウタイ”と、クチュールメイドのシルクシフォンなどで仕立てるような“ボウタイブラウス”が自分の中に根付いていて、憧れでもあったんです。それをブランド名にできないかな、と考えていました。「BOWTE (バウト/ボウト)」と「BOWTIE (ボウタイ)」のつづりが似ているので、検索するとボウタイの方が先に出てきてしまうんですが…(笑) あと、わたしの苗字が「うつぼえ」なので、「ぼえちゃん」とか「ぼえこさん」とかよく呼ばれているのもあって、「BOWE」って響きに親しみがあったというのもあります。

Q5ロゴフォントについて
教えてください。

スウィンギング・ロンドン*1 と言われる時代は少しポップな部分もあるのですが、イギリスがファッションでも音楽においても様々な分野で爆発的に勢いのある時代だったそうです。イギリスに「BIBA*2」というブティックショップもありました。そんな時代感のノスタルジックな雰囲気がロゴに出るといいなぁと思って作っていただきました。
✳︎1:1960年代におけるファッション、音楽、映画、建築を中心としたロンドンのストリートカルチャー。マリークワントやツイッギー、ミニスカートなどに代表される。 ✳︎2:1964年、ファッションイラストレ-タ-出身のバーバラ・フラニッキが、ロンドンでオープンしたショップ。60年代半ばからスウィンギング・ロンドンを代表するブランドとして数えられる。

Q6服をつくるうえでの
インスピレーションは
どこから得ていますか?

イメージボードやドリームノートを作っているんですけど、気になる人やモノの写真とかイメージしてたものを少しずつ貼っていくんです。インテリアのソファーの写真から、ふかふかしたイメージのダウンジャケットをデザインしたりとか。他にも自分のスマホに気になったものを保存しておいたりもします。結婚して子供がいることで時間の制約もあるんですが、自分の生活もあって、スタッフの生活もあって、でもちゃんとお届けしたいものがあって。限られた時間の中で無理なくつくるということも大切にしています。

Q7デザインにおいて、
こだわりやルールはありますか?

イギリスのロックが好きというのはあるのですが、今の自分や時代感に浄化して大人な感じに仕上げたいというか、砕けすぎない、洗練された上品な感じにはしたいなと思ってます。それこそ先日日本でもYSLの展覧会がありましたが、まさにベティ・カトルー*3 みたいな。彼女もその時代にしてはすごく身長が高くて、男性物を着ていて、それが彼女が着ると一層女性らしく見えるというか、女性らしく着こなしてるんですよね。それまではあまり女性のパンツルックはFashionとしては少なかった時代なのですが、それをムッシュ・イヴ・サンローランがパンツスタイルの“スモーキング*4 ”を生み出し、男性の装いを男性っぽく着こなすのではなくて、それを着ることによってより一層女性っぽくなるっていうのが好きで。ですので、コレクションにもフリルシャツがありますが、フェミニンなイメージではなく、男性のスモーキングスタイルにおけるドレスシャツをカジュアルな装いに落とし込んで仕上げています。
✳︎3:ブラジル生まれのフランス人。元シャネルモデルであり、ファッションのアイコン。イヴ・サンローランとトム・フォードの両方からミューズとして採用されている。 ✳︎4:フランスのファッションデザイナー・ブランドであるイヴ・サンローランによって1966年に発表された女性のためのタキシードスタイル。

Q8ご自身の着こなしの
こだわりを教えてください。

(靭江さんが少し恥ずかしそうにされていたところ、PRご担当の枝さんが靭江さんの着こなしの魅力をお話ししてくださいました。)

枝さん

カジュアルだけど着崩しすぎないMIX感があります。例えば、上品なシャツにスウェットパンツみたいなスタイルとか。あと色の掛け合わせがすごく上手だなって。ちょうど昨日も撮影だったのですが、寒いので防寒してきてくださいねって言ったら、防寒着スタイルも色のバランスが素敵で。白にグレーに茶色に少しカーキを入れるみたいな。自分だと、ただ暖かいアウター着ておけば良いかな、なんて思ってしまいカラーコーディネートまで計算しない事が多いので…。きっと、洋服を手に取った瞬間に合わせたい色が直ぐに浮かぶのでしょうね。あと素材のMIX感もそうですよね。靱江さんは服だけではなく、音楽、アート、インテリア、空間、人物など、様々なモノの知見もあって、さっきのソファーからインスピレーションを受けてっていう話もそうですけど、その知見の蓄積を、必要な時に必要な部分をチョイスしながら、形にしていくのがすごく上手なんだろうなって思っています。それがたぶん靱江スタイルになっていってるんじゃないかなって(笑)

靱江さん

ありがとう!
そういえば、うちの父は早くに亡くなったんですが、すごく格好良かったんですよ。「なんでこんなに紳士なものに憧れてるんだろう」と今回の取材が見つめ直す機会にもなって、昔の写真とか見返していたら、単純にファザコンかな?って(笑) うちの両親がすごく着道楽で、お洒落が大好きだったんです。親戚の人に「そんなに服があってもお家は建たないよ」なんていじられるくらい。なので、そういう影響が強くて、沢山お洒落させてもらったなって記憶があります。母は洋裁学校に行ってたので、家庭の洋裁の域を超えて、雑誌を参考にモード・モダンな洋服をつくってくれて。人から「えー!これどこで買ったの??」とか言われ、母が満足気に喜ぶ姿を目にしていて、単純にすごく嬉しかったです。ですので、先ほどのデザインにおいてのこだわりに付け加えたいのは、そんな風に誰もが持っている流行りのものより今の気分に合っていて我が子への特別な思いを注いだ素敵なもの、その郷愁が私の中の何よりの服作りの為の原動力となっているのかもしれません。

Q91st COLLECTIONは
どんなラインナップでしょうか。

もともと自分自身も好んで着用しているのもあり、やりたかったテーラードジャケットを中心に作らせていただきました。モトクロスパンツやハンターコートなどのマニッシュなボーイズアイテムも、日常的なモダンにシフトさせて提案したいなと思ったんです。
スウィンギング・ロンドンの時代の雰囲気に憧れて音楽とアートがミックスしたような時代感の雰囲気をイメージしました。

Q10特に思い入れのあるアイテムは?

そうですね…、メディアなどでは「テーラーを得意とする」とご紹介いただくことは多いんですが、自分の中ではまだテーラーを得意の域には決して及んでいないので、 今は日々探求しながら作らせてもらっております。テーラードジャケットは日常的に着ていて、一番特別で大好きという想いはあるので、それを注いでいます。

テーラードジャケット以外で一番推していきたいのは、デイリーに穿いていただきたい“モトクロスパンツ”。 本物のモトクロスパンツは革とかボンディングの素材ですが、日本の洗練されたフィンクスコットンとかモールスキンとかツイルとかデニムで作ったり、それを女性が穿くとすごくモダンに見えるんですよね。パターンは立体的にできてるのですごく穿きやすいんですけど、実は縫製の工程がものすごく多いので、できる縫製工場が限られるうえに、工場さんからは嫌がられています(笑) それでもなんとか、デニムみたいに気軽に穿いてもらえるものを作りたいなって。着こなしとしては、テーラードジャケットとかかしこまったスタイルの外しとして、デニムの代わりに差し込んでもらいたいです。

上記のモトクロスパンツを引用するイメージで自分の中で理想的なのが、ニコラ・ジェスキエール時代の“BALENCIAGA”。彼がつくる無骨でマニッシュなものも、女性が着ることで洗練されて女性らしくモダンに見えて素敵なんですよね。
モトクロスパンツ以外のコレクションでも、そういったマニッシュなものを女性らしくモダンに着ていただけるようなアイテムをご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

RECOMMEND

インタビューの中で靱江さんが
おすすめしてくださったアイテム

  • DOUBLE CLOTH SHORT JACKET

    DOUBLE CLOTH
    SHORT JACKET

    表はざっくりした綾目のリネン、裏は高密度に織り上げたコットンを使った二重織のジャケット。ごわつきを一切感じない、ふくよかで表情のある“虫文毛織✳︎5 ”のテキスタイルを使って仕立てました。今の時代にあわせて、短めでフィットしたシルエットに。フロントのボタンホールを玉縁で仕上げしているのもポイントですね。一重仕立てで、裏はすべてパイピングで始末、袖は細身ですが裏地を付けているので、袖を通していただきやすいと思います。 ✳︎5:ボウトの母体である尾州産地のファブリックメーカー
  • CHECK DOUBLE BLEASTED JACKET

    CHECK DOUBLE
    BLEASTED JACKET

    英国の老舗ファブリックメーカー“William Halstead” の生地を使ったジャケット。メンズパターンメイキングで女性の体に合わせてモデリングし、オリジナルの造り毛心を据えて、本格テーラー縫製工場でふんわり立体的に仕立てました。デヴィッド・ボウイの歌に “DUDE BOY”という“都会的な男の子”とか“伊達男”という意味合いの歌詞が出てくるのですが、 そういうちょっと砕けたロックな雰囲気をイメージしています。ダンガリーのフリルシャツやスニーカーと合わせたり、気負わずラフに、日常的に着てもらいたいですね。
  • LACE PANELED SHIRT

    LACE PANELED SHIRT

    形はベーシックなドレスシャツですが、BOWTEのアイコン的アイテム。上質なコットンのイタリア産ブロード素材に、フランスの伝統的オートクチュールレースメーカーのレースを胸元から袖にかけて使用しています。インナーはキャミソールで少し肌を透けさせる感じもいいですし、まだ肌寒い時期はカラーのシアー素材のハイネックニットを入れていただいてもいいですね。このハードなレースは凛としていて私自身すごく気に入っているので、次のシーズンも新色でやりたいなと思ってます。
BOWTE 1st COLLECTION / 2023 SPRING & SUMMER